現在の歯科治療では、インプラント治療を除いては、もはや語ることが出来ないほどにその重要性は大きくなっています。私がインプラントと出会ったのは、今から約30年以上前の、歯科大学生の頃でした。当時 お世話になっていた歯科医院の院長先生が、インプラント治療を行っていたことがきっかけでしたが、当時のインプラントは様々な材質と形態があり、日本では国産の人工サファイアインプラントが主流でした。しかし、手術法も確立されているとは言えず、予後不良例も高い確率で生じている様子でした。 その結果、歯科大学によっては、大学病院内でのインプラント治療を全面禁止にしていた大学も少なくありませんでした。大学院を卒業し、前橋に戻り開業いたしましたが、3年程して先輩の歯科医師からスウェーデン国立イエテボリ大学へのインプラント研修のお誘いを受けました。1992年8月、スペインではバルセロナオリンピックが開催されており、初めて訪れたインプラントの総本山での研修は驚きの連続でした。今まで、霧に包まれていたインプラントというものが、俄然確立された治療法と確信できるようになったことを覚えています。しかし、現代のインプラントの基礎となる当時のインプラントは、顎の骨が薄く小さい日本人にはまだまだ適応範囲が狭いものに感じました。また当時、インプラント手術後は、1週間の入院期間が設けられており、入院設備のない診療室での導入に一抹の不安を感じ得ませんでした。帰国間際に開発会社(現在のノーベルバイオケア社)の副社長に日本人の小さい顎に適応する低コストのインプラントの開発を訴えて、将来の希望を託して帰国した記憶があります。 しかし、現在 私の診療室ではインプラント治療はスタンダードな治療となりました。 それは前述しましたように、CTスキャンによる診断が強力なサポートをしてくれているからです。 その結果、長年の経験と知識に頼ったインプラント治療から、より安全で確実なインプラント診療にステップアップすることが出来ました。術前、患者さんにCTの診断画像をお見せして十分な説明をすることが可能になり、患者さんからの疑問や不安にお答えすることも無理なく行える様になりました。 当院で現在使用しているインプラントシステムは、ノーベルバイオケア社のインプラントです。ノーベルの名前でから連想されますように、あのノーベル賞を主催している会社のインプラント製品を用いています。少し専門的な話になりますが、インプラントと上部構造体(冠のことです)を接合するために、一般的にはアバットメントという部分を用います。大多数の歯科医師は、インプラント治療には既成品を用いておりますが、当院はすべてCAD/CAM(コンピューター制御での3D加工)を用いたカスタムアバットメント(チタンやジルコニア等のセラミックからの切削加工製品)を用いています。すなわち、患者さんのインプラント1本1本に異なる形態や大きさ・角度等最適なアバットメント形態を、コンピューター制御で1本1本精密機械加工して使用しています。治療が終わってしまえば、冠に隠れて目に見えない部分ですが、インプラント治療の成否を司る構造体ですので、手間とコストを度外視して採用しています。 |
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